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アマチュア無線の本質とは

 2016/10/11 当局Facebook投稿より、一部加筆


 立場上、「アマチュア無線って何が楽しいのか」という問いに、しばしばぶつかります。

 よく、アマチュア無線の紹介として、「コンテスト」「アワード」「モールス」「移動運用」などが取り上げられます。しかし私は、この紹介を、上の質問の答えとしてはあまり良いとは思いません。

 これらは「アマチュア無線の『楽しみ方』の一側面」に過ぎず、「アマチュア無線とは何か」「何が楽しいのか」という質問への根源的な答えとはかけ離れていると考えます。すなわち、これらを楽しいと思わないアマチュア無線家も、必ずいるはずなのです。

 アマチュア無線の法的定義(具体的には省略します)を解釈すれば、

1. 趣味としてやる(金銭上の利益のためでなく)
2. 自分の興味に基づく(個人的な無線技術への興味によって)
3. 向上心を持つ(自己訓練、通信及び技術的研究)

の三つを満たしている無線通信業務を「アマチュア無線」と言うことができそうです。

 しかし、これではあまりに漠然として、アマチュア無線を知らない人にとっては、まるで成り立っていないような説明です。

 そこで、こんな説明はどうでしょう。
「アマチュア無線家は、科学そのものを趣味にすることができる」

 ここで言う「科学そのもの」とは、科学全般を指すのではなく、いわば「科学の精神」、つまり、「自分の興味を自分で工夫して、考え、試し、確かめる」ということです。その興味の対象は、「電波を使って話す」という原点から多方面へ無限に広がり得、そこから無限に続く探求が始まる。これは理工学的な方面だけではなく、社会科学の方面にも広がります。

 考えてみれば、世の中の「趣味」と呼ばれるものの中で、アマチュア無線ほど能動的、しかもその自由度が高いものはどれだけあるでしょうか。

 たとえば写真や音楽など、芸術系の中で「作るもの」は、この観点ではその仲間に入りそうです。

 しかし、アマチュア無線がこれらと決定的に違うのは、「(自発的に)コミュニティ(あるいはソサエティ)を形成する」ということです。

 一見して個々人の趣味としての存在であるが、実は非常に社会的である。これが2つ目の本質と考えます。

 そのネットワークは、容易に世界中に広がります。必要なのは「アマチュア無線」というただひとつのキーワードだけです。

 従って、「アマチュア無線=理系」というイメージが強いのですが(もちろん科学への興味というのは「きっかけ」になりうる強い要素ですが)、実は文系理系などいう問題は些細な事で、「楽しみ方」の差を生むに過ぎないと思うのです。

 実は、私が青少年に対するアマチュア無線PRを続けている中で、見つけた「意味」がここにあります。この二つの「本質」は、青少年に対して考えたとき、非常に教育的側面が強いのです。「自立型」の教育ということがよく言われていますが、アマチュア無線はこれにぴったり合います。加えて、最近悲観されている「コミュニケーション力」の観点でも極めて効果的であることは、自明といっていいでしょう。

 アマチュア無線人口、特に若年層の減少が叫ばれて久しいですが、「ただの連絡手段」という世間に根付いた迷信を捨てさせ、正しい魅力をいかに伝えられるか、これが重要です。そのためにも、「アマチュア無線の本質」というところを、今一度、捉えなおしてみませんか。

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